夢の光始動 X線自由電子レーザー施設SACLA(下) 

【未知解明へ 日本の将来支える基盤】


 東日本大震災後、関心が高まる再生可能エネルギー。未知の世界を照らすSACLA(さくら・兵庫県佐用町)は、原子力や化石燃料からの脱却という極めて重い課題にも挑む。

 3月7日から稼働するさくらで、7月末までに行われる研究は計25件。岡山大教授沈建仁(しんけんじん)(50)の実験も、その中に選ばれた。

 米科学誌サイエンスは昨年末、2011年の「科学10大成果」に日本の研究を二つ選んだ。一つは、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の分析。もう一つが、沈らによる植物の光合成を引き起こす物質(触媒)の解明だった。

 二酸化炭素と水から、酸素とでんぷんを作る‐。小学6年生で習う植物の光合成だが、光のエネルギーだけで水を分解する触媒の仕組みは、謎に包まれている。

 このメカニズムを工業的に利用する「人工光合成」が実現すれば、水に光を当てるだけで水素ガス燃料が生産でき、さらにはガソリンなどを合成することも可能になる。

 研究はこの40年近く、日本がリードしてきたが、アメリカや韓国も巨費を投じて国家プロジェクトを始動。企業も注目し、トヨタ自動車の研究子会社は昨年9月、水と二酸化炭素だけで有機物を合成する世界初の成果を出した。

 それでも人類はまだ、植物の能力に追いついていない。触媒は10億分の1秒単位で動いているとみられ、これまでは観察する技術がなかった。10兆分の1秒の動きをとらえるさくらなら、そのメカニズムを解き明かせるのではないかと期待されている。

 沈は「植物は数十億年かけてこの触媒を作った。その動きが見えれば、植物に近づく大きなヒントになる」と期待する。

     ◆

 さくらを使う研究で、産業界から唯一選ばれたのは東芝。独自に開発した「レーザーピーニング」という技術の原理を確かめる基礎研究だ。

 刀鍛冶が鋼をたたいて日本刀を強くするように、レーザーで圧力を加え金属を強化する。溶接の継ぎ目などに使うと劣化を予防でき、原子炉や発電タービンの長寿命化などが可能になる。やはり金属の変化も10億分の1秒以下。解明できる性能を持つのは、さくらしかない。

 成長する新興国などでの電力事業を、同社は将来の収益の柱と見込む。この分野でも価格面を武器に台頭する中国企業などに対し、日本が競り勝つには、技術力を駆使し長寿命化や二酸化炭素削減など、付加価値の高い製品で対抗するしかない。

 同社技監の佐野雄二(59)は将来をこう見通す。「基礎研究に即効性はない。だが、スプリング8が今の産業を支えているように、さくらは10年後の日本を支える技術と人材を生み出すだろう」=敬称略=

             (古根川淳也)by神戸新聞
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by mimiyori-hansinn | 2012-03-09 09:02 | サイエンス/読書
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