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H2B打ち上げ 小型衛星が活路を開くか

  宇宙開発をめぐり、また日本独自の技術が花開くのか。無人補給機「HTV(こうのとり)」を載せた国産最大のロケット「H2B」3号機が打ち上がり、国際宇宙ステーションに向かった。

 これを待ち構えるのが、一足早くロシアの宇宙船「ソユーズ」で出発していた日本人飛行士、星出彰彦さんだ。

 「こうのとり」は、福岡工業大(福岡市)が開発した「にわか衛星」など超小型衛星を5基積み込んでいる。順調に行けば9月上旬、これらの衛星を星出さんが宇宙空間に放出する実験に挑む。

 地上から直接打ち上げず、宇宙から宇宙へ衛星を送り出す取り組みだ。世界初の画期的な試みであり、ぜひ成功させ、日本の技術力を示してもらいたい。

 5基は緩衝材で包まれている。ステーションの日本実験棟「きぼう」内で梱包(こんぽう)を解き、放出装置の先端に取り付ける。ロボットアームでつかんで専用扉から宇宙空間に出し、アームの方向を調整した後、ばねの力で順次押し出すという。

 小型衛星をロケットに載せて地上から打ち上げる場合、振動など厳しい環境を克服しなければならず、開発に時間がかかり、費用もかさむ。宇宙からの放出は衝撃が格段に少ないうえ、機器の調子を直前までチェックできる利点もある。

 福岡工大の衛星は搭載カメラで地球を撮影し、写真データを従来の100倍の高速で地上に送る実験などをする。成功すれば、小型衛星をインターネット中継に利用することも考えられるという。

 九州産の小型衛星が国産ロケットで宇宙に向かうのは、鹿児島大などが開発した「KSAT(ケーサット)」(2010年5月)、九州工業大(北九州市)の「鳳龍弐号(ほうりゅうにごう)」(今年5月)に次いで3例目だ。九州工大の衛星は太陽光発電機による高電圧発電に成功した。今回も計画通り成果が挙がることを期待したい。

 今回、初披露となる宇宙での衛星放出システムが軌道に乗れば、小型衛星の打ち上げ機会が増え、宇宙利用に新たな可能性が広がりそうだ。小型衛星の需要は今後高まるとみられ、日本の宇宙ビジネスの目玉にもなり得るのではないか。

 世界に目を転じると、宇宙開発の潮流は激変している。宇宙ビジネスは米国では民間が担う方向が鮮明になる一方で、中国が自前の宇宙ステーション構想を打ち出すなど存在感を増している。

 そんな中で、米国が主導し日本が大きく依存してきた国際宇宙ステーションは20年に運用終了が見込まれている。その後の日本の宇宙開発をどうするのか、戦略づくりを急がなければならない。

 今月12日、宇宙政策の新たな司令塔となる宇宙戦略室が内閣府に発足した。

 衛星の放出システムをはじめ、こうのとりも、ロケットのH2AやH2Bも、日本が積み上げてきた宇宙技術の結晶だろう。星出さんの宇宙長期滞在は日本人としては4人目だ。そうした蓄積を生かす日本型の宇宙戦略が求められる。


=2012/07/22付 西日本新聞朝刊=

by mimiyori-hansinn | 2012-07-24 07:33 | サイエンス/読書
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