次世代スパコン 先端科学立国へ首位奪え
文部科学省の有識者会議がまとめた次世代スーパーコンピューター(スパコン)の開発計画である。来年度から開発に着手し、平成32年ごろに稼働させる。
スパコンの性能は科学技術力の指標であり、産業競争力にも直結する。日本は一昨年、理化学研究所と富士通が共同開発した「京」が世界最高性能となったが、現在は3位に後退している。
次世代スパコンの開発を成長戦略の要と位置づけ、「オールジャパン」の開発態勢を構築して世界一に返り咲いてもらいたい。
次世代スパコンは「エクサ級」と呼ばれる。エクサは100京(10の18乗)を表す単位で、米国や中国もエクサ級スパコンの開発を目指している。熾烈(しれつ)な国際競争の中での首位奪回は容易ではなかろうが、科学技術立国を国是とする日本は、常にトップを争う位置を維持しなければならない。
「2位じゃだめなのですか」などという後ろ向きの議論で開発に水を差すようなことは、二度とあってはなるまい。
スパコンによるシミュレーションは、理論と実験に続く「第3の科学」と呼ばれる。自然界や人間社会の複雑な現象をひもとき、将来予測を行うためには、膨大な情報処理能力が要求される。
例えば、多数の細胞、遺伝子が相互作用する生命現象や宇宙・物質の成り立ちは、スパコンによって解明の糸口が見いだされ、生命科学や物理学に飛躍的な進展をもたらした。
その成果は私たちの生活に直接かかわる産業分野にも波及し、新薬の開発や航空機・自動車の設計などで本格利用が始まっている。地震や津波の予測や被害想定、気象情報の高精度化など防災への活用も大きな柱だ。
高性能のスパコン開発は、最先端の科学を切り開く。産業競争力を高め、安全な生活への貢献も期待できる。約1100億円の開発費は、未来への投資として決して高額とはいえない。
自然科学や製造業に限らず、スパコンは幅広い分野にイノベーションをもたらす可能性をまだまだ秘めているはずだ。
大学、研究機関、産業界が総力を結集し、利活用の裾野をさらに広げていきたい。
by産経