謎のアップルiWatch、「必勝パターン」再来なるか

 米アップルが7月に、日本を含む複数の国・地域で「iWatch」という名称で商標登録を出願していることが明らかになった。その名前から、腕時計型の身につけて使用する超小型端末(ウエアラブルコンピューター)を開発し、市場投入を考えていることが推測できる。同社は発売前の製品に関して一切コメントを出さない。そのため詳細は現時点で不明だが、出願済みの特許などから、その姿はうっすらと見えてくる。新端末が成功するかは、iPhoneなどで実践してきた「必勝パターン」にもちこめるかにかかっている。

 アップルが、ウエアラブルコンピューター市場へ参入することを予感させる兆候はいくつかある。2月には、同社が米国で腕時計型端末の特許を出願していたことが判明。さらに、5月28日に米国で開催されたカンファレンスで、同社のティム・クック最高経営責任者(CEO)はウエアラブル端末に対し「極めて関心を持っている」と表明。さらに、ウエアラブルの形態について「腕時計は興味深い」とコメントしている。

■ウエアラブル端末が続々と登場
 ウエアラブル端末向けの要素技術は熟成してきている。

 例えば携帯機器向けCPUや無線トランシーバーIC、通信制御LSIなどは、処理性能を高めた上で実装面積を小型化し、さらに消費電力も抑制している。電池は、大容量で継ぎ足し充電による劣化が少ないリチウムイオン電池が主流となっている。


 ディスプレーは、面積は同じでも表示できる情報量を増やすよう解像度が上がっているほか、基板や表面のカバー層にプラスチックを採用することで、くねくねと自在に曲げられる「フレキシブルディスプレー」も実用化しつつある。


 こうした流れを受け、ここ1年ほどウエアラブル端末関連のニュースがにわかに増加している。米国では、米ナイキの「ナイキプラス・フューエルバンド」、米ジョウボーンの「アップ・バイ・ジョウボーン」、米フィットビットの「フィットビット・フレックス」など、スマートフォン(スマホ)との連携機能を特徴とする多機能活動量計を相次ぎ製品化。
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 これらは既存の歩数計や活動量計と比べ一段と小型・軽量化されており、見た目のデザインも工夫が凝らされている。歩数や消費カロリーのほか、睡眠時間や睡眠の質を測れる。


 米グーグルは13年4月に、眼鏡型端末「グーグルグラス」の試作版を開発者向けに発売しており、一般向けにも14年に提供を始める。ソニーモバイルコミュニケーションズも、同社製スマホ専用のオプション製品という位置付けながらも、メールやツイッター、フェイスブックの閲覧機能、音楽再生機能などを備えた多機能腕時計を製品化している。


■アップルには「必勝パターン」がある
 ようやく本格始動したウエアラブル端末。アップルが、「iWatch」でこの分野に参入とすると、気になるのはどんな製品を企画し、どんな普及シナリオを描いているのかだ。

 携帯音楽プレーヤー「iPod」からスマホ「iPhone」、タブレット(多機能携帯端末)「iPad」に至るまで、アップルは共通の戦術を用いて新たなハードウエアやプラットフォームの浸透を実現させている。いわば「必勝パターン」を持っているわけだ。
 一般消費者に対する必勝パターンは、(1)外観や画面のデザインを徹底的に磨き上げ「格好良い」と思わせ所有欲を刺激する(2)価格やバッテリー駆動時間、使い勝手などで欠点をつくらず、消費者が購入後に不満を感じないよう実用性を確保する(3)広告などを通じて新たな使い方を提案するとともに、将来に向けてさらに使い方が広がると消費者が期待する機器の可能性をアピールする――という3点で説明できる。


 一方、アプリ開発者やコンテンツホルダーに対しては、(4)多くの消費者が購入する見込みを示し、アップル主導のエコシステムに参加することで大きな収益と知名度向上などを見込めると思わせる(5)対応アプリの開発がさほど難しくなく、対応が容易であるとアピールする(6)アップル製品というプラットフォームに各社が開発するアプリなどを組み合わせることで、多様な用途に活用できるという潜在力や汎用性を訴求する――といった点が挙げられる。


 絶好調に見えるアップルとて、エコシステムは必ずしも盤石ではなく、手数料の高さや審査の厳格さ、ときどき発生する突然の運用変更など不便な面もある。それでもアップルが有利なのは、ハードウエアで他社に圧倒的な差を見せつけ、他社の追随を許さない、または追いつくのに長期間かかるという、いわば「先行逃げ切り」の競争環境に持ち込んでいるからだ。


■特許出願を基に製品概要を予測
 では今回はどうか。
 アップルが米国で特許出願した書類を基に『日経デザイン』誌が予測した記事によると、iWatchは(1)曲げられるフレキシブルディスプレーを採用する(2)CPUや電池などの集積部がディスプレーに隠れるようにして、外観上は一周ぐるりとディスプレーになる(3)ディスプレーを本体の表面だけでなく裏面にも回り込ませることで、外観上はディスプレーの左右の縁がないように見せる(4)腕に巻き付けた状態だけでなく、ぴんと伸ばして板状でも使えるよう双安定バネを採用する(5)待ち受け時に表示する色やデザインをカスタマイズするアプリを提供する――といった特徴を持つものを研究しているようだ。


 仮にこのアイデアが現実のものとなれば、外観の全面がディスプレーという構造は差異化の大きなポイントになるだろう。待ち受け状態のデザインを自在にカスタマイズできるほか、限られた本体サイズでも、表示可能な情報量を増やせる。また細長い画面とすることで、電光掲示板のように文字を流して表示するアプリを開発しやすくなる。潜在力の大きさや汎用性の高さという点で開発者に強烈にアピールできそうだ。

 アプリ開発の難易度については、視認可能なディスプレーの横幅が装着する人により変わるという点で難しさがあるかもしれない。また、例えばメールや交流サイト(SNS)のアプリなどでは、iWatchの小さな画面で長文の文字入力をタッチ操作で行うのは難しいとみられ、音声入力などでどの程度の実用性を確保できるかが課題となりそうだ。

 ただ、これらの点を除けば、表示デバイスは単なる長方形の細長いディスプレーともいえる。巻き付けた状態でディスプレーをどう活用するかというアイデアさえ浮かべば、開発はさほど困難ではないだろう。


■価格は300ドル?
 残る課題は、iWatchがどの程度売れて、アプリ開発者にとって対応アプリの開発がどの程度収益性に結びつくかという点だ。そのためには、上述のような特徴を備えた製品をどの程度のコストで量産でき、どの程度の小売価格を設定して、どの程度コンスタントに出荷できるか、がポイントになるだろう。


 米国でブームとなったブレスレット型の活動量計は、おおむね100~150ドル程度。iWatchは、デザインの革新性と汎用性の高さを考えれば、これらの製品よりある程度高くても消費者の支持を得られるだろう。


 一方、iPod touchの米国での小売価格は229~399ドルだ。これを大幅に上回る価格帯になると、購入を検討する消費者が少なくなる恐れがある。


 記者は、iWatchの小売価格は300~500ドルといった水準になると予測している。急速に市場を席巻し競合他社に差をつけることを重視するなら300ドルに近い水準、完成度の高さやハードウエア販売による着実な収益を重視するなら500ドルに近い水準をそれぞれ狙うとみている。


 米国をはじめとする先進国市場において、iPhoneの先行者利益が薄らぎつつあり、アップルは韓国サムスン電子などアンドロイド陣営の猛追を許している。欧州市場でもiPhone5の販売不振が明らかになるなど、右肩上がりだった業績が曲がり角に差し掛かっている。それだけに、未開拓の新市場であるウエアラブル端末でアップルがどう足掛かりを築くかに高い関心が集まっている。iWatchが好調なスタートダッシュを切れば、iPodやiPhone、iPadのときと同様、アップルは莫大な先行者利益を手にすることになるだろう。


 とはいえ、消費者もアップル製品に対して目が肥えつつある。製品化の時期が市場の期待より何年も遅れたり、前評判を裏切るような中途半端な製品を出したりすれば、今後の業績にも影を落としかねない。iPhoneやiPadに慣れきった消費者をうならせるデザインや使い勝手を実現し、過去の必勝パターンをiWatchで再現するには、アップルが越えるべきハードルは高い。
                    by日経
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by mimiyori-hansinn | 2013-08-22 19:16 | パソコン・IT
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