老年の性の葛藤〟実感込めて 渡辺淳一さん新刊「愛ふたたび」

e0241325_19533567.jpg 医療の進歩で健康寿命がのびたことで、高齢者の性生活の悩みは切実さを増している。週刊誌が競って熟年のセックス特集を組むのもそのためだろう。作家、渡辺淳一さん(79)は新作『愛ふたたび』(幻冬舎)で、性的不能となった男の葛藤を通して、そんな超高齢化社会における男女の愛のひとつのかたちを提示する。

 主人公は、愛妻を亡くし第二の人生を歩み始めた整形外科医「気楽堂」こと国分隆一郎、73歳。それなりに充実した日々を送っていたが、ある日、付き合いのある女性とベッドをともにしたとき、全く勃起する気配がないことに気づき、絶望のどん底に突き落とされる。

 性的不能に悩む気楽堂には、作家自身の心境が重ねられている。70歳を過ぎて自らが直面した症状だからだ。

 「男にとって存在自体を問われるような根源的な問題。僕自身、実際にそうなってみると大きな衝撃を受け、しばらく落ち込んだ」と渡辺さん。一方で〈これを書かない手はない〉という作家の本能もうずいたという。

 「『恥』の意識が強くて多くの作家が口をつぐんできた題材だから、さらすのには勇気や覚悟が必要だった。でも僕はどちらかというと『私小説作家』で、恋愛小説でも圧倒的に自分の内面を描いている。落ち込み、そこからよみがえる生きざまを書いてみたいと思ってね」

 物語では、回復しようのない症状に悩む気楽堂の前に、亡き妻の面影をしのばせる女性弁護士が患者として現れる。読みどころは、症状を前向きに受け入れ、これまでのセックス観を改めていく気楽堂の心の動きにある。性行為は、男性側からの一方通行ではなく、双方向のコミュニケーション。気楽堂は言葉と情熱、相手の立場を思いやる想像力を尽くして女性弁護士と向き合う。「何かを失ったことで、今まで以上にすてきで、深い愛に目覚めていく。それがタイトルの意味するところ」と笑みを見せる。「年齢を重ねて身体が弱っても、並行して女性への関心が衰えるわけではない。そういうとき、どう人を愛すべきか…新しい生き方を提示したかったなあ」

 数年前に前立腺がんが見つかり治療を続けるが、小説にエッセーに、と健筆ぶりは変わらない。「僕なりの方法で、ほかの人が書いていない作品を一つでも多く残したい」。そんな「強い欲望」が、医学的な人間認識をもとに男女の性愛に迫る独自の恋愛小説に結実する。

 「幸い僕は医学をやってきたから、人間の欲望を分析する視点を持っているけれど、年を取ってから知ることはいっぱいある。もっと人間という生き物を深く書いてみたいなあ」(海老沢類)
                    byMSN
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【プロフィル】渡辺淳一
 わたなべ・じゅんいち 昭和8年、北海道生まれ。札幌医科大学卒。45年に『光と影』で直木賞。55年に『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞。『阿寒に果つ』『失楽園』『天上紅蓮』など著書多数。
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by mimiyori-hansinn | 2013-09-03 16:48 | サイエンス/読書
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