1回30億円なり 新型ロケット「イプシロン」が開く宇宙ビジネス

 「イプシロン」。今月27日に宇宙へと飛び立つ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とIHIが開発した小型ロケットだ。日本の伝統である「ペンシルロケット」の流れをくむ固体燃料ロケットとして7年ぶりの打ち上げ。コンパクトかつ手軽が持ち味のこの新型ロケットは、衛星の打ち上げ受注で躍進を目指す日本の宇宙ビジネスの切り札となる。
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 1回30億円なり。JAXAが提唱する新型ロケット、イプシロンの量産時の打ち上げ費用だ。固体ロケットの先代にあたる「M―5」は約75億円だったから、半額以下に圧縮したことになる。開発期間もロケットでは異例の短さといえる3年に抑えた。

 なぜロケットでコスト削減なのか。理由は簡単だ。M―5は打ち上げ能力1.8トンで、当時の世界最高水準を誇る日本の自信作だった。だが、小型ロケット市場では商業化が進展。需要がないM―5は2006年、退役に追い込まれた。

 これからの50年をイプシロンから始めよう――。10年、新型ロケットが開発の緒に就いた。ギリシャ文字のイプシロンには、小さくても存在感がある、とのニュアンスがある。高い機能性で作業を効率化した経済的なロケット。日本らしいロケットが生まれた。

 コスト削減、その1。開発費の抑制だ。M―5と比べ4割も少ない約205億円。圧縮手法は、部品と技術の共通化だ。例えば、固形燃料を大量に詰め込む第1段エンジンは、日本の主力ロケットである「H2A」の補助ブースターを転用している。

 H2Aの全長はイプシロン(24メートル)の2倍強の53メートル。H2Aは液体燃料を使って飛ぶが、固体燃料を入れたブースターを2つ小脇に抱え、推進力を補助している。製造するIHIによると「サイズはイプシロンの方が少し大きいが、構造はほぼ同じ」だ。

 コスト削減、その2。打ち上げ作業の省略化だ。M―5で42日だった機体の配置から打ち上げ後の片付けまでの所要日数が、新型機ではわずか1週間に収まる。人手に頼っていた点検を、イプシロンは内蔵する「人工知能」で片付けることができる。

 「ものづくり」という点では、ロケットに知能を持たせるという発想自体に劇的な技術革新がある。これまでの点検といえば、作業員が部品を組み立て、解体する人海戦術。多くは「大丈夫なものを再確認する」のが目的だった。

 イプシロンの場合、管制室のパソコン画面で「OK」の文字を確認するだけでいい。打ち上げ指令に必要なパソコンは2台。「新ロケットは新技術が必要だが、操作性の良さがイプシロンの『世界一』だ」とIHIエアロスペースの木内重基社長は話す。

 ほかにも様々な面でコスト圧縮の可能性を探った。川崎重工業が手掛ける衛星を覆う「フェアリング」は一体成型にし、ボルト数を大幅に削減。切り離し後に着水すると、水を含んで海底に沈む。組み立てと回収の作業が大幅に減った。

 実は、まだ先の話がある。今月打ち上げるイプシロンは構成素材である炭素繊維複合材に10年以上前に開発したものを使っているという。内蔵する発電機も1990年代後半の設計。宇宙では、実績のないものは「リスク」となる。

 これらを最新のタイプに切り替えるとどうなるか。例えば、複合材素材は単価で2分の1以下に落とせるという。IHIエアロの木内社長は「今回はまだ安全運転(が最優先)のロケット。リスクとのバランスは必要だが、工夫の余地は大いにある」と話す。

 「ロケット市場は飛躍の時にある」。商業打ち上げ世界最大手、欧州アリアンスペースのステファン・イズラエル最高経営責任者(CEO)の弁だ。日本の先を行く世界で宇宙への「宅配便」市場は急速に広がる。より安く、より使いやすく。日本の宇宙産業の挑戦が始まる。
                  by日経
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by mimiyori-hansinn | 2013-09-19 16:44 | サイエンス/読書
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